2007年07月
史上初の完全民間資本による有人宇宙飛行を成功させたスペースシップワン(SpaceShipOne)の後継機開発で痛ましい事故がおきました。
メーカーであるスケールド・コンポジッツ(Scaled Composites)の試験場にて亜酸化窒素と思われる爆発事故が発生、同社の3名が死亡、他3名が重軽傷を負いました。
記事によれば点火を伴わない低温流体試験中とのことで、なぜ爆発事故になったのかは不明ですが、いずれにせよ犠牲者のご冥福を祈る次第です。
- 報道:酔っ払い宇宙飛行士がシャトルで飛んでいた(spacetoday.net)
- NASA、妨害工作や酔っ払い宇宙飛行士問題に追われる(miamiherald.com)
- 報道:酔っ払い宇宙飛行士と妨害工作に見舞われるNASA(wesh.com)
- スペースシャトル用コンピュータに破壊工作:NASA報告(spacedaily.com)
- NASA、飲酒宇宙飛行士についての報道を確認(spacetoday.net)
酔っ払い宇宙飛行士問題
少なくとも2回、宇宙飛行(1回はSoyuz、もう1回はシャトル)の直前に宇宙飛行士が酔っ払っていたことが明らかになりました。NASAの規定では飛行の12時間前以降の飲酒は禁止されており、医療関係者から危険性が指摘されたていたものの、予定通りに打ち上げられたとのこと(ただし、シャトルはその時延期になったようです)。
個人的にはNASAの規定(宇宙飛行・滞在中は飲酒禁止)が逆に直前の飲酒を引き起こす可能性を思わないでもありませんが、既に詳細調査がはじまっているとのことなので、それで何か分かることでしょう。
これが明るみに出たのはリサ・ノーワック(Lisa Nowak)元宇宙飛行士の事件にからんでのこと。これも伝説の一部に……。
コンピュータ破壊工作
8月打ち上げ予定のスペースシャトル(エンデヴァー)に搭載する(ISS設置用と思しき)コンピュータ(spacedailyの原文では"network box"なのでハブないしルーターでしょうか?)の結線が切断されていたとのこと。
こちらも調査中で現状で詳細は公開されていませんが、対応としてより厳格なルールが制定される予感がします。
NASAで国際宇宙ステーション(ISS)に深く関わっているトミー・ホロウェイ(Tommy Holloway)氏が議会(下院)においてスペースシャトル退役後のISS物資補給に関する懸念を表明しました。また、ISSの建設自体もシャトルをほぼフル回転させなくてはならず、余裕がほとんどない状態です。
シャトルは2010年をもって退役するという予定になっており、しかもNASAの次期有人宇宙船(オリオン:Orion)はほぼ確実に間に合いません。NASAではロシアのプログレス(Progress)やヨーロッパのATV、日本のHTVをフル活用する考えですが、それでも不足するとみられる分を商業的に対応すべくCOTS(Commercial Orbital Trasnportation Services)という計画を立ち上げています。
COTSは民間企業にロケットや補給機を開発させ(NASAは支援する立場)、そのサービスを買い上げるというものです。公式にはなっていませんがCOTSといえば普通は"Commercial off-the-shelf"(商用既製品)の略で、NASAもそれを念頭につけた名前と推測されます。とはいえ、ISSに補給ができるような宇宙船やそれを打ち上げるロケットを開発するには時間が短かすぎるのは明らかです。
最終的にはProgress/ATV/HTVの追加、もしくはISS活動レベル縮小のいずれかになりそうな気がしますが。
アストリウム(Astrium)はドイツ宇宙局(DLR)から上段ロケットの検討を受注したとのこと。対象となっているヴェガ(Vega)はイタリア主導で開発が進められている小型ロケットです。
今回の検討の受注額はおよそEUR0.5M(約8,300万円)と小規模です。時期から考えてVegaの運用が2009年に始まった後のアップグレードとして計画されているようです。
興味深いのは次の部分です。
The upper stage currently envisaged for Vega, which is designed to carry payloads of up to 1.5 metric tons, will have a Russian/Ukrainian propulsion system.
(現在Vega用とされているこの上段ロケットは、設計上1.5トンまでのペイロードを運ぶことが可能なもので、ロシアやウクライナの推進システムを搭載することになる)
既にアメリカはアトラス5(Atlas V)でロシアのロケットを採用していますし、日本も(本当に開発できるかはともかくとして)GXロケットに同じ系統のロケットを使うことにしています。
アメリカ空軍研究所(AFRL)が「プラグ&プレイ部品の作り方ワークショップ」を8月28日にカートランド基地(Kirtland AFB)で開催するそうです。
プラグ&プレイ衛星(PnPSat)は、理想的イメージとしてはUSBのように簡単接続で動く衛星です。ワークショップはそのための概略紹介やデモが行われるようです。
PnPSatの応用はもちろん軍用ですが、あまり最高レベルの性能を要求しないような科学観測衛星などに用いることができれば人類のために少し貢献できるかもしれません。いつになるかは分かりませんが。
XM(XM Satellite Radio)のヒュー・パネロ(Hugh Panero)CEO(&共同創業者)が来月で辞任だそうです。ライバルであるシリウス(Sirius Satellite Radio)との合併案がアメリカ政府により認められるか不透明な現時点での辞任は、最近のXMの不調とあわせると実質追いやられた形に見えます。
新しい産業で何百万人の利用者を集めるところまで成長させた功績はあるわけですが、記事には言及のない次の行動はどうなるのでしょう。
この2月に出版された「戦略資産としての宇宙(Space as a Strategic Asset)」(USD45、リンク先のamazon.co.jpでは6,305円)についての書評です(あいにく当方では所有していません)。
書評を読む限り、著者ジョーン・ジョンソン=フリース(Joan Johnson-Freese)はきわめて冷静な政治タイプのようで、全体としての主張は「アメリカはこれまでの蓄積を生かして宇宙開発を平和的に国際協力に基づき推進することで国際社会での権威を高めるべきで、みだりに宇宙軍事化などを行い孤立すべきではない」といったところでしょうか。
書評末尾付近にアメリカが今後重視すべき考え方が列挙されていますが、個人的には「実現可能かつインパクトのある目標を設定する」という項目もあるといいと感じました。
いずれにせよ、いい論者がいるのはうらやましいことです。
言うまでもなくアメリカは来年の大統領選に向けて政治がホットな状態が続いています。上記論説は「大統領候補から宇宙政策についてほとんど何も出てこないこと」を述べつつ、最終的に次期政権の主導によりNASAが変わらざるをえなくなる可能性について指摘します。
大統領選で宇宙政策が話題にならないのは、述べても得にならないというだけの話だとは思いますが(NASAは人々にぬるま湯な支持を受けており、結局いずれの候補も「宇宙探査を着実に過剰コストを避けつつ進める」としか言い様がなく、支持基盤を増やす役に立ちません)、そもそも政治に宇宙政策が出てくると発想される時点でさすがアメリカです。
政治的に重要になるということは政争や戦争(例えば冷戦)に直接関連することを意味しますが、それゆえに利益が期待される側面も否定できません。
次項目とそのまま連関します。
DMCiiはイギリスSSTL(サリー衛星技術社、Surrey Satellite Technology Limited)主導の国際共同地球観測プログラムにより撮影された画像を配信する企業です。DMCはその名(災害監視衛星群)の通り地球上の災害を発見、追跡することを前提として作られた地球観測衛星群で、イギリスやアルジェリアやナイジェリア、中国やトルコ、スペインといった幅広いメンバーが関わっています(それぞれが自らの衛星をもち、ある程度の画像撮影権を独占、残りの撮影時間を共有するというユニークなシステムです)。
今回の受注はヨーロッパ宇宙局(ESA)への画像納入というだけでなく、ヨーロッパが大金をかけ構築予定のGMES(全地球環境・保全観測)サービスの一環となることを意味し、今後の維持発展のための足場となるとみられます。
ちなみに元記事に高解像度画像とありますが、実際DMC衛星の一部は解像度4mの撮影能力をもっています。現行の商用リモートセンシング衛星(1m以下級)には及ばないものの、地図や災害観測にはかなり有用な上、衛星数が多いため高頻度の観測が可能です(元々そういうコンセプトで設計されています)。
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